中学生や高校生諸君は知らないかもしれんが、いとし・こいし師匠と言えば、
中田ダイマル・ラケット師匠と並んで、兄弟漫才の二大巨頭でした。
内輪ネタや弱者の悪口などで笑いを取ったりはしない、正統派漫才でして、
亡くなったお袋が「いとこいさんは年寄りの悪口とかで笑いを取らんのがえ
えなぁ」と言うてて、確かにそやなと思ったものです。
何年か前にいとし師匠がお亡くなりになっていましたが、こいし師匠が今日
肺癌のためにお亡くなりになったと聞いて、巨星墜つ悲しみに包まれました。
ちょっと話は変わりますが・・・
昔、父親がWヤングの中田治雄(本名は中田軍治)さんと友達でしてね。
軍さん軍さんと呼んでいました。軍さんが飛び降り自殺されたときも、「高田
高校で一緒でなぁ」と悲しそうな顔をしていたものです。
自殺される前日に僕の家に電話をかけてこられ、親父はいなかったのです
が、電話を取って軍さんと喋ったのは僕でした。
「息子さんか。おとうちゃん、おるか」
「いや、いてません。どなたでしょうか」
「軍さんて言うてもろたらわかるねんけど」
「あぁ、軍さん(心の中で「あの漫才師の!」と興奮)」
「電話あったことだけ言うといてんか」
この会話、実はいまでも覚えてますねん。翌日の新聞に軍さんが飛び降りた
記事を見つけ、小学生だった僕は言いようのないショックを受けたものです。
それ以来どうも、お笑いの方がお亡くなりになると、縁もゆかりもない人でも、
その時のことを思い出して、必要以上にブルーになってしまいます。
話は戻りますが、いとこい師匠の笑いは、さんまさんや紳助さんの笑いとは
まったく性質を異にしますので、若い人たちに受けるかどうかわからない。
でもあの・・・
いとし:先般、うちの孫がな。
こいし:キミの孫がどないしたんや。
いとし:えらいコケてな。
こいし:そらえらいこっちゃがな。
いとし:膝小僧がグチャグチャになってしもたんや。
こいし:そらまた可哀相に。
いとし:ところでな。
こいし:なんや。
いとし:グチャグチャと言えば、君んとこの奥さん元気か。
こいし:なんでグチャグチャでうちの嫁さん思い出すねん。
・・・という、なんとも言えない笑いがたまらんかったですね。面白かった。
今頃は天国でダイラケ師匠たちとともに、賑やかにやっておられることと
思います。こいし師匠のご冥福をお祈り申し上げます。